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▽世界あちこち Q国づくりは「ハードです」ルーマニア 中川 昇三
  
   
  旅にもツイているのとツイてないのとがある。とくに一人だけの個人旅行でしかも短期間の旅行では、ツキの有りと無しでは、その違いは際だってくる。98年の東欧旅行では、ブルガリアが前者で、ルーマニアが後者だった。

  爆弾チェックの点検―ルーマニアには、トルコのイスタンブールから飛行機で首都ブカレストに向かった。この出発で早くもハプニング。普通なら、預け荷物は航空会社の窓口をパスすれば、あとは行き先の空港で受け取ればよい。ところが、イスタンブールのトルコ系航空機では、飛行機のタラップの前にいったん預けた荷物が並べられ、乗客がなにやらやっている。

  私には何のことかわからずに、そのまま乗り込んだ。たまたま座席からは、これらの荷物が見えた。荷物は次々に飛行機に運び込まれるなかで、私のだけが取りのこされている。
これは変だとスチュアーデスに聞くと「飛行機の前でこの荷物は自分のものだ、と申告したか」という。そんなバカなことは聞いたことがない。飛行機から飛び降りて、荷物を押さえ、「こりぁおれのだ」と日本語でどなってやった。席に戻った私は「世界じゅうでこんなことははじめてなんだが」と英語でつぶやいてみた。そしたら隣の席のルーマニア人は「こんな航空会社はトルコだけだね」と反応した。
このシステムでは、金賢姫が大韓航空機を爆弾で墜落させた(同氏の回想記による)事件は防げるが、今度のアメリカテロ事件のような自爆ならば、やはり防げない筈だ。割り切れないままに、ルーマニアの首都ブカレストに着いた。

  革命広場も写真規制―この国は8年前に大統領の独裁を追放して社会主義もやめた国である。その生々しい歴史のにおいを嗅ごうと、市中心部の革命広場にむかった。89年12月、共産党本部のバルコ二―から数万人の群衆にチャウシェスク大統領が演説中に、群衆が暴動化して大統領は本部の屋上からヘリで脱出、そのあと地方で殺されたのだ。

  広場はそんなに広くなく、ときどき車が通り過ぎ、通行人も少ない。国の運命を一瞬で変えた、そのときの状況を想像しながら8ミリで写していると、突然銃を構えた兵士が「ミスター、ミスター」といいつつ、撮影をやめろ、という。独裁者を追い出した名誉ある広場じゃないか、とこちらは思っても、相手は「ノー、ノー」の一点張りである。

  まわりを見渡したら、中年の紳士が歩いてくる。英語ができるらしいので、どうしてダメなのか、兵士に聞いてほしいと頼んだ。紳士は熱心に聞いてくれた。その結果は、兵士のいる建物はもともとは美術館なんだが、いまは一部に兵隊がはいっていて、撮影禁止だ、その他の革命広場の建物は撮ってもよいと。そんなことは当たり前じゃないか。どうもまだ社会主義の規制ムードをぬぐいきれていない感じである。

  じっと我慢の人々―この国はラテン系で、明るいイメージがあるし、オリンピックなどスポーツも華やかだ。しかしブカレストの街の印象はもっと地味だし、市民たちは社会主義から市場経済への転換にじっと耐えているのかも知れない。地下鉄で話しかけた中年女性は英語教師だった。「暮らしはどうですか」と聞くと、「なかなかハードです」という。「でも、市民革命を実現したじゃないですか」ともちあげると、「いまは民主主義があるから明るくなった」。そして遠くを見る眼差しでいった。「早く日本のように豊かになりたい」。

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